Windows 10サポート切れPCを,Ubuntu LTSで捨てずに再生する

Windows 10サポート切れPCを,Ubuntu LTSで捨てずに再生する Paso-Lab.blog
この記事は約7分で読めます。

ここで扱うのは,捨てる同然のPCである。内蔵ストレージのデータは未練ゼロ,動かなくても痛手なし,ダメもとで試す――この条件を満たすなら,私はUbuntu LTSのクリーンインストールで“再生”を強く勧める。Windows 7から10に無償アップグレードした古参機でも歓迎だ。

Ubuntu LTSは長期サポート版で,安定性と更新継続性が売りである。その中でも現時点の本命はUbuntu 24.04 LTS(Noble Numbat)だ。標準のUbuntu Desktopは5年間(~2029年4月)のセキュリティアップデートが提供され,必要なら有償のUbuntu Pro(ESM)でさらに延長できる。

この提案の狙いと限界

  • 狙い:古いハードを捨てずに,ブラウジング,メール,簡単な文書作成,オンライン学習,写真の整理など“クラウドでおこなう作業”を気持ちよくこなす環境を作ること。
  • 限界Microsoft Office(デスクトップ版)を使う用途は不向きである。LinuxはOfficeのネイティブアプリをサポートしていない。ブラウザ版(Microsoft 365 for the web)で多くの作業はこなせるが,VBAマクロや高度なレイアウト,複雑なアドインなどは機能制限にぶつかる。業務がOffice中心なら無理にLinuxへ移さない判断も十分に現実的だ。

どのUbuntu LTSを入れるか:標準か,軽量フレーバーか

  • 標準(Ubuntu 24.04 LTS,GNOME):新しめのCPU(第5世代以降)と8GB以上のRAMがあるならこれでよい。操作はモダンで,周辺情報も豊富。
  • 軽量フレーバー(Xubuntu 24.04 LTS=Xfce,Lubuntu 24.04 LTS=LXQt,Ubuntu MATE 24.04 LTS=MATE)4GB以下や,第4世代以前のCPUにはこちらがおすすめ。こちらは3年サポートだが,体感の軽さが段違いである。

Intel世代別のおすすめ(目安)

※同じ世代でも個体差がある。SSD換装RAM増設は最優先で検討する。

世代と例想定年式RAM目安推奨LTS理由と注意
第1~2世代(Nehalem / Sandy Bridge,例:i5-2400)2009–20114GB未満が多いLubuntu 24.04 LTS(最有力),Xubuntu 24.04LXQtやXfceは軽く,非力でもGUIが軽快。まずはSSD化で体感激変。フレーバーはサポート3年
第3世代(Ivy Bridge,例:i5-3320M)20124–8GBXubuntu 24.04 LTS,Ubuntu MATE 24.04省リソースで安定。動画再生や複数タブのブラウジングも実用圏。
第4世代(Haswell,例:i5-4570)2013–20148GB推奨Ubuntu MATE 24.04 LTS,標準Ubuntuも可SSD+8GBなら標準Ubuntuでも快適。軽量志向ならMATE。
第5~6世代(Broadwell / Skylake,例:i5-6200U)2015–20168GB以上標準Ubuntu 24.04 LTSブラウザ中心なら余裕。外部モニタやPWAの常用にも耐える。
第7~8世代(Kaby Lake / Coffee Lake,例:i5-8250U)2017–20188–16GB標準Ubuntu 24.04 LTS現役レベル。GNOMEでのマルチタスクも安定。

32bit世代は非対象:現在,Ubuntu Desktopは64bitのみが提供される。極端に古い32bit専用機は対象外である。

ここまで読んで「本当に動くの?」という不安に答える

私の目安では,2GHz級のデュアルコア+4GB RAM+SSDでブラウジングとWebアプリは快適圏に入る。公式ドキュメントやコミュニティ情報でも,4GB RAM/25GB以上の空き容量が“現実的な最低ライン”として繰り返し示されている。ディスプレイは1024×768以上が目安だ。

準備するもの(最短チェックリスト)

  • 別PC(ISOを落としてUSBを作るため)
  • 8GB以上のUSBメモリ(インストーラ用)
  • 有線LAN(初回セットアップでWi-Fiが不安定な個体の安全策)
  • バックアップ不要の対象PCディスクは完全消去する

ダメもとの再生企画なので,中のデータは全消去が原則である。

クリーンインストールのながれ(ざっくり)

  1. ISOを取得:公式のUbuntu 24.04 LTS(標準または狙いのフレーバー)をダウンロード。
  2. USBを作成:別PCでRufusやBalenaEtcher等を使って起動USBを作る。
  3. 起動順を変更:対象PCのBIOS/UEFIでUSB起動を最優先に。Secure Bootが古い機種で癖になるときは一時的に無効化。
  4. インストール:インストーラでディスクを消去してインストールを選ぶ。ネット接続を有効にすると,開始時点で基本アップデートが入って楽。
  5. 初期設定:日本語入力(Fcitx5やMozc),時刻同期,省電力設定(自動スリープ)を整える。
  6. 更新:最初の再起動後にソフトウェア更新を実施しておく。

何が“できる”のか:クラウド時代の主力ツール

  • Gmail/Googleカレンダー:ブラウザからそのまま使える。通知はブラウザの通知機能を活用。
  • Google ドキュメント/スプレッドシート:共同編集が主眼なら最適解に近い。
  • Microsoft 365(Web版):Word/Excel/PowerPointの基本編集は可能。だがVBA/アドイン/高度な互換要求は壁に当たる。Officeが中核業務ならWindowsを残すのが正しい。
  • Zoom/Meet:ブラウザ版で参加できる。
  • Edge/Chrome系ブラウザ:Linuxでも入手でき,拡張機能やPWAで“ネイティブ風”運用が可能。
  • PDF仕事:Evince等での閲覧,必要ならMaster PDF EditorやWebサービスで注釈もいける。

LibreOfficeの扱いと“Office前提”への正直なコメント

LibreOfficeはローカルに置く無料のオフィススイートとして優秀である。しかしレイアウト互換マクロは完全ではない。企業・顧客とのやり取りが.docx/.xlsx前提なら,私の結論は一貫して「Web版Officeで足りるかを先に検証し,足りなければWindowsを併用」である。Linux一本で無理をしないほうが総コストは下がる。

体感を上げる“最後の一押し”

  • SSD換装:SATAの2.5インチSSDでOK。費用対効果は最強。
  • RAM増設:4→8GBで体感が大きく変わる。
  • 軽量デスクトップへ切替:標準Ubuntuが重いと感じたらXubuntuやLubuntuへ。設定移行の手間より日々の快適さを優先する価値がある。
  • 自動起動の見直し:スタートアップアプリを整理し,スワップへの落ち込みを防ぐ。

よくあるつまずきと回避策

  • Wi-Fiが不安定:初回は有線LANで入れて,更新後にドライバが安定するケースが多い。
  • スリープ復帰で固まる:省電力設定を緩める,カーネルやファーム更新を待つ。
  • 古い周辺機器:プリンタ/スキャナは明確に“動作させたい型番”があるなら事前に検索。代替としてPDFワークフローへの切り替えを検討する。
  • 32bit機の持ち込み非対応。潔く対象外にしてトラブルを避ける。

まとめ:Ubuntu LTSは“ブラウザ中心生活”の強い相棒

いまは多くの作業がクラウド化されている。Gmail,Googleドキュメント,Microsoft 365のWeb版,Zoom/Meet,YouTube,学習プラットフォーム,家計やメモのWebアプリ……この領域ではUbuntu LTSは十分以上に戦える。逆に,Officeの高度機能や業務システムがWindows前提なら,Linux化を目的化せずデュアルブート/別PC併用で割り切るのが賢明だ。

“捨てる同然のPC”が手元にあるなら,Ubuntu 24.04 LTSを入れてまずはクラウド用の2号機として蘇生させてみてほしい。軽量フレーバーを選べば世代の古いIntel機でもまだまだ現役復帰できる。サポート期間と用途の相性だけ押さえれば,コストはほぼゼロ,得られる価値は大きい。

タイトルとURLをコピーしました